美容・パーソナルケア業界では、成長の鈍化が見られ、「価値」の概念が再定義されつつあります。ただ贅沢であればいい時代は終わり、本質的な価値に目を向けた選択が求められています。
本記事では、2025年から2026年にかけて美容・パーソナルケア業界に影響を与える5つの主要トレンドを紹介します。
Recession Glam(リセッショングラム)
日本語に訳すと「節約ビューティ」。不況下でも賢く美を楽しむという意味合いです。
美容における消費者は支出に対してより慎重になり、予算内で質の高い製品を提供するブランドを選ぶようになっています。「価値」への意識が高まる中、消費者は無駄を省き、思慮深い購買行動へとシフトしています。
価格に敏感な消費者行動にはさまざまなパターンが見られます。たとえば、プレミアムブランドからマスマーケット製品(一般向け製品)への切り替え、セール時のまとめ買い、ロイヤルティプログラムの活用などです。
Clinical Confidence(クリニカル・コンフィデンス)
日本語に訳すと「科学が裏付ける美容」。臨床データや専門家の推奨に基づく製品への信頼を意味します。
消費者は、科学的な裏付けや医療専門家の推奨を受けた「クリニカル」なポジショニングのブランドに惹かれる傾向が強まっています。購買プロセスが複雑化する中で、信頼できるエビデンスを持つブランドが選ばれやすくなっています。
ダーマコスメは、肌の健康効果と実証された結果を前面に打ち出す分野として急速に拡大し、大きな成功を収めている
出所:ユーロモニターインターナショナル
ダーマコスメの利用は世界的に急増しており、この傾向は2025年にさらに加速すると見込まれています。
Healthspan Plans(ヘルススパン・プラン)
日本語に訳すと「健康寿命へのこだわり」。見た目の若々しさだけでなく、心身ともに健やかに年齢を重ねたいという価値観を反映しています。
消費者は、長期的な健康目標と一致するブランドや製品を選ぶようになっています。若々しくあり続けることへの関心が高まり、加齢に伴う変化をサポートする製品が求められています。
コラーゲンやビタミンCといった実績ある成分が、食品やサプリメントと同様に、美容製品でも科学的根拠のある「活力」や「エイジングケア効果」を提供する手段として注目されています。
Loyalty Immersion(ロイヤルティ・イマージョン)
日本語に訳すと「愛されるブランド体験」。アプリやコンテンツを通じて、ブランドとのつながりを深める取り組みを指します。
美容ブランドは、ユーザーが自社アプリにより長く滞在し、動画コンテンツを深く視聴するよう促すことで、ブランドとの継続的な関わりを生み出そうとしています。消費者は、没入感があり、エンタメ性が高く、SNSなどで共有しやすい美容体験を求めています。
Netflixの番組やTikTokのミニシリーズのように、ストーリーテリングを活用したコンテンツは、日常的に消費者の端末上に存在し続ける強力な手段となっています。
Eco-Evaluation(エコ・エバリュエーション)
日本語に訳すと「持続可能性の見える化」。サステナビリティに関する取り組みを、具体的な数値や実感で伝える動きです。
消費者はこれまで以上にサステナビリティに注目しており、軽量パッケージや「どれだけ廃棄物を削減できるか」といった具体的な指標を重視しています。ブランドは製品ライフサイクルの終わりにまで着目し、これまで持続可能性があまり注目されてこなかったカテゴリーにも取り組みを拡大しています。
EUでは2024年に新たな包装関連法が制定され、美容・パーソナルケアを含む消費財に対し、最小限のパッケージデザイン要件が義務化されました。リフィル式のプレミアムフレグランス、スキンケアの詰め替え製品、プラスチック不使用の歯ブラシパッケージなどが、欧州市場で注目を集めています。
アジア太平洋地域のようにサステナビリティがまだ発展途上にある市場では、美容およびパーソナルケア両方のカテゴリでアップサイクル素材の使用が進み、意識の醸成につながっています。
今後の成長機会
リセッショングラム:米中など大国間での貿易戦争が予測される中、世界的にインフレと価格上昇を見越す消費者が増えています。ブランドは製品の品質と効果をしっかりと伝える必要があります。
クリニカル・コンフィデンス:ダーマコスメ市場の勢いは今後も続くと見られ、科学的アプローチと自然由来成分の融合による相乗効果が期待されています。
ヘルススパン・プラン:「ロングビビング(長く健康的に生きること)」は2025年・2026年も重要なキーワードです。ライフステージごとのニーズや、感情面・メンタル面のウェルビーイングにも対応する製品への需要が高まっています。
ロイヤルティ・イマージョン:斬新で魅力的な製品とインフルエンサーとのコラボレーションを通じ、ブランドは「コンテンツに語らせる」戦略を活用し、視覚的に訴えるストーリーテリングでエンゲージメントと購買を促すことができます。
エコ・エバリュエーション:美容・パーソナルケア分野における持続可能性の革新は、包装や成分の調達が中心となっていますが、今後は製品のフォーマットの多様化や「どれだけ廃棄物を削減したか」といった具体的数値の提示が重要になります。
これらのトレンドについての詳しい分析や事例、今後の予測に関するインサイトは、レポート『Top Five Trends in Beauty and Personal Care(美容・パーソナルケアにおける5つの主要トレンド)』をご覧ください。