- 2020年から2024年にかけて、世界のコーヒー豆の価格は117%高騰―小売コーヒーの平均単価は37%上昇
- コーヒー産業のプレミアム化において重要な要素は「贅沢品としての成長」「シンプルで楽しいという感覚」「ウェルネス」の3点
- コーヒー業界でも、ワイン業界で発生した二極化が進む可能性
- コーヒー第四の波の特徴は、「効率性」「テクノロジー」「カスタマイズ」「アジア勢」
【東京】この度、英国の市場調査会社ユーロモニターインターナショナル(以下、当社)は、レポート「インフレに疲れた世界におけるコーヒーのプレミアム化」(Coffee Premiumisation in an Inflation-Weary World)を発表しました。
高騰し続けるコーヒー豆、プレミアム化も難航
当社の調査によると、2020年第一四半期には1ポンド(454g)当たり1.42ドルだったコーヒー豆の価格は2024年第四四半期には3.08ドルと、117%高騰しています。また、2020年から2024年にかけての小売コーヒー*平均単価上昇率は、世界では37%**、アジア太平洋地域では21.4%**、 日本では 19.7%でした。
*レギュラーコーヒーとインスタントコーヒー(RTDコーヒーを除く)
**米ドル換算。全年に2024年の平均為替レートを適用。
コーヒー業界では、特に数量成長の見込みが少ない先進国市場において、ここ数十年、プレミアム化が推進されましたが、コーヒー豆の価格の上昇や生活費高騰により、今後はさらにプレミアム化が難しくなると見られています。レポートを執筆した当社の飲食料業界グローバルインサイトマネジャー、マシュー・バリーによると、今後プレミアム化をすすめるには、①贅沢品としての需要、②シンプルで楽しいという感覚、③健康志向(ウェルネス)の3つの要素を考慮する必要があります。
「コーヒーのワイン化」が進む?
贅沢品としてのコーヒーについて、バリーは次のように述べています:
「コーヒー業界の“第三の波”の流れにおいて、消費者は高品質な体験――すなわち従来の「迅速で手軽に消費できる」コーヒーとは一線を画し、豆の原産地や味わいを重視しながら、ただ飲むのではなく時間をかけて学び味わうスタイル――への関心を強めた。しかし今後、アラビカ種コーヒー豆の価格が高止まりする可能性が高く、このようなスペシャルティコーヒーへの傾倒は、ますます高価な習慣となり、一般消費者には手の届かないものとなるだろう。一般消費者は、ロブスタ種の使用やビーンレスコーヒーとのハイブリッド製品など、より手頃な選択肢へと移行する可能性が高くなる」
「ワイン業界でも、原産地や味わいにこだわる消費者がいる一方で、若い世代はシンプルで安価なテーブルワインへ移行し、現在ではそれが消費の大半を占めている。一方で、世界屈指のワイン畑で生産される高級ワインの需要も依然として高く、数量ベースでの成長率は2020年以降、ワイン全体を上回っている。コーヒー業界でも、高級コーヒー豆が大きく成長するという同様の傾向が、今後見られる可能性がある」
コーヒーの第4の波は「シンプルで楽しい」が特徴
コーヒー業界は新たな局面「第四の波」に入っていると、バリーは述べています:「第1の波では家庭のキッチン、第2の波ではスターバックスなどのカフェ、第3の波では小規模チェーンや個人経営の店舗が消費の中心地だった。しかし、第4の波では、もはや中心地となる特定の場所は存在せず、効率性・テクノロジー・カスタマイズを重視し、今までにはなかった、中国発のラッキンコーヒーなど、アジア勢の影響が色濃くなるというのが特徴。第四の波が到来した理由のひとつは、消費者が単純に疲れ果て、楽しくてシンプルなものを求めていることにある。高品質なコーヒーに興味がないわけではなく、できるだけ自分の労力をかけずに楽しめるコーヒーを飲みたいと思っている。状況によっては、高額を支払うことも厭わない。第三の波に見られた、豆の原産地や味わいを重視し、ただ飲むのではなく、時間をかけて学び味わうスタイルへの関心は、今後徐々に薄れていくだろう」
ウェルネスへの訴求
生活費全般を減らそうとする動きが広がる中でも、ウェルネスは依然として、消費支出における優先順位の高い項目となっています。当社が実施した「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:ライフスタイルサーベイ」(2025年版/40か国・各国約1,000名を対象)によると、回答者の34.9%が、今後12か月でウェルネス関連への支出を増やす予定だと回答しています。こうした傾向から、今後のプレミアム化においても「ウェルネス」の視点を打ち出すことが有望と考えられます。
下図は、オンラインで販売されている小売コーヒーの訴求別SKU数の変化(2019年―2023年)を示しています。それによると、以下の訴求を持つ商品が大きく成長していることが分かります:
・高タンパク
・ヌートロピック(脳機能の働きを高める成分)
・プロバイオティックス(腸内環境を整える成分)
一方で、今後最も成長の鈍化が見込まれる訴求は、ウェイトロス(減量)です。バリーはその理由として次の2点を挙げています:
・人々の健康観の変化
・GLP-1薬やその類似薬の使用
「1点目については、近年、消費者の健康観は変化しており、単なる減量を目指すのではなく「添加物の多い食品を避ける」「運動する等の自然な方法により全体的な健康増進を目指す」消費者が増えている。2点目については、現時点では、GLP-1薬(糖尿病や減量に用いられる食欲抑制薬)やその類似薬は、コストや供給面の課題から利用は限定的。しかし、将来的にはGLP-1薬やその類似薬の使用は大幅に拡大するだろう」
– 以上 –
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